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書評
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《随想》
卓球アンソロジー


田辺 武夫
2016.08.20
ISBN:978-4-7733-8012-5
定価 1620円
北海道新聞2016年9月11日号

名作の描写 愛ある想像

 卓球を熱愛する著者が、文学から映画までありとあらゆる創作物において卓球に触れている部分を取り上げ、独自の文学観と詩情をもって解説するという前代未聞の奇作・労作である。
 著者は高校教諭の傍ら卓球専門誌などでこうした文章を発表してきた知る人ぞ知る存在で、本書はその集大成となる。その情報量と行動力は趣味の域を軽々と超える。否、趣味だからこそ可能だったというべきか。
 当然、卓球を主題とした作品が多く取り上げられているが、むしろ著者の真骨頂は卓球とは縁もゆかりもなさそうな作品に「卓球」の文字を見つけ出すことにある。『アンネの日記』ではアンネたちが卓球に熱中していたことを見つけ出し、武者小路実篤『友情』では主人公がヒロインの卓球をする姿の美しさに息をのむ描写を見逃さない。
 こうした執筆活動のモチベーションは著者の言葉によれば、「卓球が表現者によってどのように描かれているかを探り、その作品の想像力を卓球人の活力に変えること」だというが、ときに著者の興味は作品だけではなく作家たちと卓球とのわずかな関わりにまで及ぶ。芥川龍之介と川端康成が卓球で対戦したとか、井伏鱒二が卓球の審判をしたなどというどうでもよさそうな記述までをも全集や雑誌の片隅に見つけ出し、その光景に思いをはせるのだ。本書の卓球文化史としての一面である。
 白眉は、若き日の夏目漱石がロンドン留学をしていた時期、当地で流行し始めた卓球に触れていた可能性に思い当たり、ついにその記述を日記の中に発見するくだりだ。それが日本に卓球を導入したとされる坪井玄道のロンドン留学の前年であったことから、著者は、漱石が卓球をした最初の日本人であることに思い至り、感慨にふける。ここではもはや漱石さえも著者の卓球に対する尋常ならざる思いの引き立て役と化している。
 これほどまでに著者をとらえこのような本を書かせてしまう卓球というものの奥深さと罪深さを堪能できる1冊である。
(評・卓球コラムニスト 伊藤条太)


日経新聞2016年10月13日号(夕刊)

「目利きが選ぶ3冊」
古今の心の奥に触れる言葉


 本当に思ったことだけを端正に書く。根底に静かで熱い使命感がある。つまり、よき文芸。卓球サークルの外の読者にとっては「知られざる名文家」発見の喜びもかさなる。
 かつて早稲田大学卓球部主将にして高校の元国語科教員が、小説に時に随筆に映画、卓球にまつわる古今の表現から心の奥に触れる言葉を引く。アナーキストの大杉栄は作家の吉屋信子とピンポン台に対峙していた。拉致被害者の蓮池薫は平壌でのテレビ観戦の記憶を冊子連載に記す。日本初の卓球人が夏目漱石との仮説は著者による日記精読から。
 「ゴムと、汗と、木の香りが合わさって、やる気が起きてくる」。小学五年生がラケットを作文にした一節だ。。
(評・スポーツライター 藤島大)
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《小説》
ギザ耳ロベールと怪談集


江見 祥生
2016.05.20
ISBN:978-4-8231-0940-9
定価 1944円
津山朝日新聞2016年6月27日号

本で冒険してみたい

 「体が弱く冒険ができなかったので、この本で冒険をしてみようと思った」――。37年間にわたり人工透析を受けながら闘病生活を送る林田の江見祥生さん(65)が、中世のヨーロッパを舞台にしたファンタジー小説『ギザ耳ロベールと怪談集』を初出版した。
 実在するリヒテンシュタイン公国をモデルにしている。主人公のロベールは元傭兵で、友人の侯爵が建国した際、天から認められて国を守護する“上級精霊”に。「異端審問官」や「奴隷商人」といった弱者や善人を迫害する者たちを、仲間や子孫、御使いの「猫」たちとともにあの手この手で懲らしめ、悔い改めるチャンスを与える物語。5章で構成している。
 幼いころから病弱で、小学生のころ腎臓を患った江見さんは、父親に買ってもらった少年少女文学全集を夢中になって読んだ。「宝島」が一番のお気に入りで、「ロビンフッド」や「十五少年漂流記」「海底二万海里」「飛ぶ教室」なども愛読したという。國學院大学では国語学を専攻した。
 週3回、1回4時間にわたり透析を受けている間は、常に物語に思いをはせているという江見さん。6年ほど前に母親に読んでもらおうと、父親の後押しもあり小説を書き始めたが、書きすすめるうちに、子どものころから支え続けてくれた小説を自分のために書きたいと思い、約半年間で書き上げた。
 「亡くなった母と父も喜んでくれていると思う。冒険はまだまだ続きます」と江見さん。すでに次作を執筆中だ。
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《歌集》
歌集 いもうと


天内 みどり
2016.04.20
ISBN:978-4-7733-8000-2
定価 1944円
読売新聞2016年5月18日号

妹に届くこと願い 歌集出版

 かほるさんは1960年2月27日、秋田市の看護学校3年生のとき、寮から外出したまま行方がわからなくなった。卒業式を間近に控え、就職先の病院も決まっているなど不自然な点が多いため、拉致問題を調査する民間団体「特定失踪者問題調査会」が、かほるさんを「拉致濃厚」な特定失踪者と認定し、リストを公開している。
 「一言の遺言もなく消えし吾子あきらめかねて一人涙す」
 「生きてあらばとく帰り来よ学舎に恩師も友も待ちわびてあり」
 5章構成の歌集の冒頭には、父・一栄さんが、娘が突然姿を消した悲しみや不安、無念さなどを詠んだ短歌を収めた。
 続く第1章「いもうと」には、天内さんが当時の父の姿を詠んだ「『たづね人』のビラ貼りてゆく父の背に積もる白雪いまも目に顕つ」などの歌を掲載。「妹よ寒くはないか平壌に零下二十度の冬は来向ふ」「妹よ蝶となりて還り来よ万景峰に翅をやすめて」と、妹に直接話しかけるような歌も多く、最愛の妹の帰国を強く願う気持ちがにじみ出ている。
 天内さんは、陸軍獣医郡だった父の赴任先・満洲(現中国東北部)から引き揚げる途中、平壌郊外で終戦を迎え、母やかほるさんと1年間の抑留生活を送った。子ども時代に、想像を超える苦労を分かち合った姉妹だからこそ、天内さんは「かほるは、きっとあの笑顔で生き抜いているはずだ」と信じている。
 拉致問題解決に向けた取り組みは進んでいないが、「この本が、北朝鮮にいるはずの妹の手に渡ればいいと思って出版した。これを読めば、家族がかほるを長年思い続けていることが伝わるはずだ」と話している。



デーリー東北2016年5月13日

書評:家族の悲嘆 歌に込め

 教員不足が深刻だった1950年代前半、当時大学生だった私に「優秀な美少女たちがいるから手伝ってくれないか」との誘いがあった。英語の教員として半年ほど受け持った八戸東高第5回生には、早世した詩人福井桂子さんをはじめ、有名大学に合格するような優れた少女が多かった。その中に天内さんがいた。
 その後、八戸市史編纂委員会の事業に関わった私は、久しぶりに天内さんと再会した。その時、既に天内さんの妹・木村かほるさんは、北朝鮮に拉致された疑いがある特定失踪者だった。
 天内さんが15年前に刊行した北朝鮮からの引き揚げ体験記「芙蓉の花」を読んだ時、初めて天内さんの過酷な過去を知り、同時にその文才に驚かされた。さらに、今回の歌集「いもうと」では、体験記に書かれたことを超えるような出来事のあることを知った。
 60年2月、秋田赤十字高等看護学院3年生だったかほるさん=当時21歳=は、こつぜんと姿を消したのである。
 歌集には父の故・一栄さんが手帳に記した〈生きてあらばとく帰り来よ学舎に恩師も友も待ちわびてあり〉などの歌を載せた。また、天内さん自身も〈「妹を捜しつづけて五十四年」テレビの私をひとりで視をり〉と詠み、ともにかほるさんへの悲嘆のほどが良くわかる。
 後半の「おとうと」の章には、がんのため2009年に若くして亡くなった弟・ 洋二さんを思う歌が収録されている。
 京都大を卒業し、関西大の有名教授であった洋二さん。
 収録作品に次の歌がある。〈われよりも十五も若い洋二さん死んではならぬ「かをる」のためにも〉
 洋二さんは、かほるさんの情報が入らないことを気に掛けたままの最期であったという。
 いまだに拉致問題解決の糸口が見当たらないが、一刻も早く解決できることを心から祈っている。
(島守光雄=八戸ペンクラブ顧問・八戸市在住)



秋田魁新報2016年4月24日号

妹を思い 歌集出版

 「『お姉ちゃん』と 呼ぶ声のして 目覚めたり 昨日も今日も そしてあしたも」「たった一度の 父の涙を われは見き 男鹿半島より 遥か見遣りて」。歌集に載せた515首のうち、かほるさんに関する歌は100首以上ある。失踪から56年余り。みどりさんは年を重ねたが、脳裏に浮かぶかほるさんの姿は若い頃のままだ。
 みどりさん、かほるさん姉妹と母の3人は終戦を北朝鮮で迎え、引き上げの途中で一時平壌に抑留された。手を取り合って何とか帰国し、みどりさんは憧れだったという高校教師に。かほるさんは病弱だった母の世話をしようと看護師を志した。
 かほるさんは秋田市の秋田赤十字高等看護学院に入学。卒業を控えた60年2月、友人に「ちょっと出掛けてくる」と言い残して学生寮から外出し、行方が分からなくなった。服装は普段着で持ち物は参考書1冊。既に八戸市内の病院に就職が決まっていた。
 失踪後、みどりさんは父と何度も本県を訪れ、かほるさんの痕跡を探した。男鹿市で漁師から「不審船を見掛けたことがある」と聞き、北朝鮮による拉致を疑うようになった。
 みどりさんが短歌を始めたのは86年。決して歌が得意ではなかったが、かほるさんを思うと言葉があふれ、詠まずにいられないこともあった。かほるさんを知る友人から昨年春に「かほるさんに宛てた歌集をつくって」と言われ、出版を決意。これまでに詠んだ約3千首から、掲載する歌を一つずつ選んだ。
 歌集の冒頭には、2000年に他界した父が詠んだ6首も収めた。「一言の 遺言もなく 消えし吾子 あきらめかねて 一人涙す」。父は元軍人。弱音を吐かず、短歌に親しんでいたわけでもないが、壮絶な悲しみを手帳につづっていた。
 拉致問題解決の糸口はいまだに見えない。北朝鮮は14年に拉致被害者らの再調査を行うとしていたが、今年2月には中止を表明。みどりさんの期待は失望に変わった。事態の進展が望めなくなったことで、みどりさんは、かほるさんら特定失踪者の問題が忘れ去られてしまうという不安も抱いている。
 「歌集を通じ、家族の無念さを伝えることが今の原動力」とみどりさん。両親の墓前にかほるさんの無事を報告できる日まで自らを奮い立たせ、妹を捜し続けるつもりだ。歌集にはこんな1首も載せた。
 「すこやかに 今ある命 ありがたし われにやらねば ならぬことある」



東奥日報2016年4月15日号

「かほるを忘れないで」

 北朝鮮に拉致された疑いが濃厚とされる特定失踪者木村かほるさんの姉・天内みどりさん(82)=八戸市=が「いもうと」と題した歌集をまとめた。終戦後、北朝鮮の収容所から手を取り合って逃げた苦難や、妹と会えないまま他界した父の無念さを歌に込めた。高齢の自分に残された時間は少ない。拉致問題解決へ糸口が見えない今、「かほるの存在を忘れないでほしい」と強く願っている。
 1960(昭和35)年2月。かほるさんは秋田県の秋田赤十字高等看護学院3年だった21歳のとき、こつぜんと姿を消した。理由が見当たらず、不自然な状況だったことから、天内さんは何か事件に巻き込まれたと直感。44年後の2004(平成16)年、北朝鮮の拉致問題を調査する民間団体「特定失踪者問題調査会」が拉致の疑いが濃厚として、特定失踪者と認定した。
 「生きているうちに会いたい」。そう思いながら、時間は無情に過ぎた。事態は一向に進展しない。そして今年2月、日本による独自制裁強化を受けた北朝鮮は、拉致問題に関する特別調査委員会を解体すると表明した。「こんな状況では、拉致問題も妹も、世間から忘れ去られてしまう」。危惧した天内さんは、妹の生きた証しを広く知ってもらうため、約30年かけて積み上げてきた歌を世に出すことを決めた。
(中略)
 歌集冒頭には16年前、「かほるを頼む」と言い残して亡くなった父一栄さん=享年(97)=が遺した「一言の遺言もなく消えし吾子あきらめかねて一人涙す」といった6首も記してある。
 天内さんも年を重ね、白髪が増えた。足が悪くなり、歩くのも不自由になってきた。それでも「妹の生存を信じる気持ちが、老いた今の自分の支えになっている」と強調する。日本政府の対応について「どんなささいなことでもいい。特定失踪者に関する情報があるならば、教えてほしい」と述べた。



デーリー東北2016年4月15日号

「家族の思い残したい」

北朝鮮に拉致された可能性が高いとされる八戸市出身の看護学生木村かほるさん=失踪当時(21)=の姉で、同市在住の天内みどりさん(82)が、歌集「いもうと」(近代文藝社)を出版した。拉致問題が進展せず、かほるさんの新たな情報も届かない中、「妹のために家族の思いを本に残しておきたい」と、約30年間で詠んだ短歌3千首余りから、515首を選んだ。
(中略)
 歌集は、父・一栄さんが生前、手帳に書き留めていた短歌で始まる。5章で構成。第1章の「いもうと」では、突然いなくなったかほるさんを捜し、それでも見つからない両親の無念や、拉致疑惑を受けて必死に活動する天内さんの思いを詠んでいる。
(中略)
「妹がいなくなった当時は拉致という発想もなく、両親は本当に悲しんでいた」と天内さん。「妹の情報を待ち続けて長い時が過ぎ、不安を感じるからこそ、家族の思いを伝えたかった」と力を込める。
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《辞典》
松本清張索引辞典


森 信勝
2015.12.20
ISBN:978-4-8231-0927-0
定価 16200円
ハヤカワ ミステリマガジン 2016年5月号

ミステリ界の巨人を顕彰する、圧巻の大労作

 いかにも人の良さそうな男が、実は殺意を醸成。その明るい仕草のひとつひとつが犯罪につながっていることをあとで知るスリルなんていうのが、この文学の醍醐味だ、と乱歩さんはいう。
 その流れでいうと、松本清張の諸作品こそ、スリル満載だ。たとえば『ゼロの焦点』で、貞淑な妻に男の匂いを感じてから主人公が味わう渦にまきこまれるような感覚。こういうのが日常のなかのスリルだろう。熱烈なファンを自認する岩井志麻子さんが、清張文学は恐怖小説だ! というのもそういう意味だろう。
 あらためて、森信勝編『松本清張索引辞典』にまとめられた清張作品のリストを眺めているとくらくらしてくるほどだ。そのスリルの発生源をみつける作家としての視点の多様さがよくわかる。この本は著書、共著、エッセイ、対談、映像、音声から本の帯に書かれた文章まで、文字通り清張さんの断簡零墨を集めきった大労作。定価は高いが、ミステリ界の巨人を顕彰するに、これに勝る本はない。

2016年4月23日 図書新聞

辞書・事典特集 お薦めのこの<一冊>

 松本清張の全軌跡を網羅する辞典が刊行された。編集したのは森信勝氏。清張好きが高じて著作などを集めるようになり、やがて辞典を編むまでにいたったのだという。著書だけでなく、共著・脚本・海外翻訳作品・映像・インタビューなど延べ5300事項、対談・シンポジウム・ドラマの出演者など延べ3300人が、年次別、五十音別に収められている大変な労作である。また、親族からの情報などをもとに作成された独自の関連年譜も付されている。
 1953年、直木賞候補だった『或る「小倉日記」伝』が、途中、芥川賞の選考委員会に回付されるという異例の事態を経て芥川賞を受賞。『点と線』『眼の壁』『ゼロの焦点』『砂の器』などがベストセラーとなり戦後を代表する作家となった。その後も、推理小説、時代小説、ノンフィクション、評伝など多岐にわたる広範で精力的な活動を長きにわたり展開。そんな松本清張という異能の作家の、まさに全軌跡と呼ぶにふさわしい辞典の登場だ。

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