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書評
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《歌集》
歌集 いもうと


天内 みどり
2016.04.20
ISBN:978-4-7733-8000-2
定価 1944円
読売新聞2016年5月18日号

妹に届くこと願い 歌集出版

 かほるさんは1960年2月27日、秋田市の看護学校3年生のとき、寮から外出したまま行方がわからなくなった。卒業式を間近に控え、就職先の病院も決まっているなど不自然な点が多いため、拉致問題を調査する民間団体「特定失踪者問題調査会」が、かほるさんを「拉致濃厚」な特定失踪者と認定し、リストを公開している。
 「一言の遺言もなく消えし吾子あきらめかねて一人涙す」
 「生きてあらばとく帰り来よ学舎に恩師も友も待ちわびてあり」
 5章構成の歌集の冒頭には、父・一栄さんが、娘が突然姿を消した悲しみや不安、無念さなどを詠んだ短歌を収めた。
 続く第1章「いもうと」には、天内さんが当時の父の姿を詠んだ「『たづね人』のビラ貼りてゆく父の背に積もる白雪いまも目に顕つ」などの歌を掲載。「妹よ寒くはないか平壌に零下二十度の冬は来向ふ」「妹よ蝶となりて還り来よ万景峰に翅をやすめて」と、妹に直接話しかけるような歌も多く、最愛の妹の帰国を強く願う気持ちがにじみ出ている。
 天内さんは、陸軍獣医郡だった父の赴任先・満洲(現中国東北部)から引き揚げる途中、平壌郊外で終戦を迎え、母やかほるさんと1年間の抑留生活を送った。子ども時代に、想像を超える苦労を分かち合った姉妹だからこそ、天内さんは「かほるは、きっとあの笑顔で生き抜いているはずだ」と信じている。
 拉致問題解決に向けた取り組みは進んでいないが、「この本が、北朝鮮にいるはずの妹の手に渡ればいいと思って出版した。これを読めば、家族がかほるを長年思い続けていることが伝わるはずだ」と話している。



デーリー東北2016年5月13日

書評:家族の悲嘆 歌に込め

 教員不足が深刻だった1950年代前半、当時大学生だった私に「優秀な美少女たちがいるから手伝ってくれないか」との誘いがあった。英語の教員として半年ほど受け持った八戸東高第5回生には、早世した詩人福井桂子さんをはじめ、有名大学に合格するような優れた少女が多かった。その中に天内さんがいた。
 その後、八戸市史編纂委員会の事業に関わった私は、久しぶりに天内さんと再会した。その時、既に天内さんの妹・木村かほるさんは、北朝鮮に拉致された疑いがある特定失踪者だった。
 天内さんが15年前に刊行した北朝鮮からの引き揚げ体験記「芙蓉の花」を読んだ時、初めて天内さんの過酷な過去を知り、同時にその文才に驚かされた。さらに、今回の歌集「いもうと」では、体験記に書かれたことを超えるような出来事のあることを知った。
 60年2月、秋田赤十字高等看護学院3年生だったかほるさん=当時21歳=は、こつぜんと姿を消したのである。
 歌集には父の故・一栄さんが手帳に記した〈生きてあらばとく帰り来よ学舎に恩師も友も待ちわびてあり〉などの歌を載せた。また、天内さん自身も〈「妹を捜しつづけて五十四年」テレビの私をひとりで視をり〉と詠み、ともにかほるさんへの悲嘆のほどが良くわかる。
 後半の「おとうと」の章には、がんのため2009年に若くして亡くなった弟・ 洋二さんを思う歌が収録されている。
 京都大を卒業し、関西大の有名教授であった洋二さん。
 収録作品に次の歌がある。〈われよりも十五も若い洋二さん死んではならぬ「かをる」のためにも〉
 洋二さんは、かほるさんの情報が入らないことを気に掛けたままの最期であったという。
 いまだに拉致問題解決の糸口が見当たらないが、一刻も早く解決できることを心から祈っている。
(島守光雄=八戸ペンクラブ顧問・八戸市在住)



秋田魁新報2016年4月24日号

妹を思い 歌集出版

 「『お姉ちゃん』と 呼ぶ声のして 目覚めたり 昨日も今日も そしてあしたも」「たった一度の 父の涙を われは見き 男鹿半島より 遥か見遣りて」。歌集に載せた515首のうち、かほるさんに関する歌は100首以上ある。失踪から56年余り。みどりさんは年を重ねたが、脳裏に浮かぶかほるさんの姿は若い頃のままだ。
 みどりさん、かほるさん姉妹と母の3人は終戦を北朝鮮で迎え、引き上げの途中で一時平壌に抑留された。手を取り合って何とか帰国し、みどりさんは憧れだったという高校教師に。かほるさんは病弱だった母の世話をしようと看護師を志した。
 かほるさんは秋田市の秋田赤十字高等看護学院に入学。卒業を控えた60年2月、友人に「ちょっと出掛けてくる」と言い残して学生寮から外出し、行方が分からなくなった。服装は普段着で持ち物は参考書1冊。既に八戸市内の病院に就職が決まっていた。
 失踪後、みどりさんは父と何度も本県を訪れ、かほるさんの痕跡を探した。男鹿市で漁師から「不審船を見掛けたことがある」と聞き、北朝鮮による拉致を疑うようになった。
 みどりさんが短歌を始めたのは86年。決して歌が得意ではなかったが、かほるさんを思うと言葉があふれ、詠まずにいられないこともあった。かほるさんを知る友人から昨年春に「かほるさんに宛てた歌集をつくって」と言われ、出版を決意。これまでに詠んだ約3千首から、掲載する歌を一つずつ選んだ。
 歌集の冒頭には、2000年に他界した父が詠んだ6首も収めた。「一言の 遺言もなく 消えし吾子 あきらめかねて 一人涙す」。父は元軍人。弱音を吐かず、短歌に親しんでいたわけでもないが、壮絶な悲しみを手帳につづっていた。
 拉致問題解決の糸口はいまだに見えない。北朝鮮は14年に拉致被害者らの再調査を行うとしていたが、今年2月には中止を表明。みどりさんの期待は失望に変わった。事態の進展が望めなくなったことで、みどりさんは、かほるさんら特定失踪者の問題が忘れ去られてしまうという不安も抱いている。
 「歌集を通じ、家族の無念さを伝えることが今の原動力」とみどりさん。両親の墓前にかほるさんの無事を報告できる日まで自らを奮い立たせ、妹を捜し続けるつもりだ。歌集にはこんな1首も載せた。
 「すこやかに 今ある命 ありがたし われにやらねば ならぬことある」



東奥日報2016年4月15日号

「かほるを忘れないで」

 北朝鮮に拉致された疑いが濃厚とされる特定失踪者木村かほるさんの姉・天内みどりさん(82)=八戸市=が「いもうと」と題した歌集をまとめた。終戦後、北朝鮮の収容所から手を取り合って逃げた苦難や、妹と会えないまま他界した父の無念さを歌に込めた。高齢の自分に残された時間は少ない。拉致問題解決へ糸口が見えない今、「かほるの存在を忘れないでほしい」と強く願っている。
 1960(昭和35)年2月。かほるさんは秋田県の秋田赤十字高等看護学院3年だった21歳のとき、こつぜんと姿を消した。理由が見当たらず、不自然な状況だったことから、天内さんは何か事件に巻き込まれたと直感。44年後の2004(平成16)年、北朝鮮の拉致問題を調査する民間団体「特定失踪者問題調査会」が拉致の疑いが濃厚として、特定失踪者と認定した。
 「生きているうちに会いたい」。そう思いながら、時間は無情に過ぎた。事態は一向に進展しない。そして今年2月、日本による独自制裁強化を受けた北朝鮮は、拉致問題に関する特別調査委員会を解体すると表明した。「こんな状況では、拉致問題も妹も、世間から忘れ去られてしまう」。危惧した天内さんは、妹の生きた証しを広く知ってもらうため、約30年かけて積み上げてきた歌を世に出すことを決めた。
(中略)
 歌集冒頭には16年前、「かほるを頼む」と言い残して亡くなった父一栄さん=享年(97)=が遺した「一言の遺言もなく消えし吾子あきらめかねて一人涙す」といった6首も記してある。
 天内さんも年を重ね、白髪が増えた。足が悪くなり、歩くのも不自由になってきた。それでも「妹の生存を信じる気持ちが、老いた今の自分の支えになっている」と強調する。日本政府の対応について「どんなささいなことでもいい。特定失踪者に関する情報があるならば、教えてほしい」と述べた。



デーリー東北2016年4月15日号

「家族の思い残したい」

北朝鮮に拉致された可能性が高いとされる八戸市出身の看護学生木村かほるさん=失踪当時(21)=の姉で、同市在住の天内みどりさん(82)が、歌集「いもうと」(近代文藝社)を出版した。拉致問題が進展せず、かほるさんの新たな情報も届かない中、「妹のために家族の思いを本に残しておきたい」と、約30年間で詠んだ短歌3千首余りから、515首を選んだ。
(中略)
 歌集は、父・一栄さんが生前、手帳に書き留めていた短歌で始まる。5章で構成。第1章の「いもうと」では、突然いなくなったかほるさんを捜し、それでも見つからない両親の無念や、拉致疑惑を受けて必死に活動する天内さんの思いを詠んでいる。
(中略)
「妹がいなくなった当時は拉致という発想もなく、両親は本当に悲しんでいた」と天内さん。「妹の情報を待ち続けて長い時が過ぎ、不安を感じるからこそ、家族の思いを伝えたかった」と力を込める。
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《辞典》
松本清張索引辞典


森 信勝
2015.12.20
ISBN:978-4-8231-0927-0
定価 16200円
ハヤカワ ミステリマガジン 2016年5月号

ミステリ界の巨人を顕彰する、圧巻の大労作

 いかにも人の良さそうな男が、実は殺意を醸成。その明るい仕草のひとつひとつが犯罪につながっていることをあとで知るスリルなんていうのが、この文学の醍醐味だ、と乱歩さんはいう。
 その流れでいうと、松本清張の諸作品こそ、スリル満載だ。たとえば『ゼロの焦点』で、貞淑な妻に男の匂いを感じてから主人公が味わう渦にまきこまれるような感覚。こういうのが日常のなかのスリルだろう。熱烈なファンを自認する岩井志麻子さんが、清張文学は恐怖小説だ! というのもそういう意味だろう。
 あらためて、森信勝編『松本清張索引辞典』にまとめられた清張作品のリストを眺めているとくらくらしてくるほどだ。そのスリルの発生源をみつける作家としての視点の多様さがよくわかる。この本は著書、共著、エッセイ、対談、映像、音声から本の帯に書かれた文章まで、文字通り清張さんの断簡零墨を集めきった大労作。定価は高いが、ミステリ界の巨人を顕彰するに、これに勝る本はない。

2016年4月23日 図書新聞

辞書・事典特集 お薦めのこの<一冊>

 松本清張の全軌跡を網羅する辞典が刊行された。編集したのは森信勝氏。清張好きが高じて著作などを集めるようになり、やがて辞典を編むまでにいたったのだという。著書だけでなく、共著・脚本・海外翻訳作品・映像・インタビューなど延べ5300事項、対談・シンポジウム・ドラマの出演者など延べ3300人が、年次別、五十音別に収められている大変な労作である。また、親族からの情報などをもとに作成された独自の関連年譜も付されている。
 1953年、直木賞候補だった『或る「小倉日記」伝』が、途中、芥川賞の選考委員会に回付されるという異例の事態を経て芥川賞を受賞。『点と線』『眼の壁』『ゼロの焦点』『砂の器』などがベストセラーとなり戦後を代表する作家となった。その後も、推理小説、時代小説、ノンフィクション、評伝など多岐にわたる広範で精力的な活動を長きにわたり展開。そんな松本清張という異能の作家の、まさに全軌跡と呼ぶにふさわしい辞典の登場だ。
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《医学》
患者さんとご家族のための パーキンソン病のすべて

症状と薬治療の解説から生活環境での訓練まで


宮崎 雄二
2015.10.30
ISBN:978-4-8231-0926-3
定価 2160円
全国パーキンソン病友の会 会報 2016年1月 No.143

 パーキンソン病の治療は服薬とリハビリを中心にして一生涯にわたる長い継続治療を必要とします。少しでも進行を抑え、健康時に近い状態を保つためには、主治医に任せっぱなしにせず、患者自らが自己の病気を理解し、改善しようとする熱意が要求されます。
(中略)
 30数年前に友の会の会員の要請で「家庭の医学書」として出版した冊子を、その後の進歩した治療法などを加味して新しく出版したものです。専門的なことも平易な言葉で書かれており、パーキンソン病の全体像が分る良書です。
(中略)
 第29章では、家族の関わり方が、いかに大切であるかか詳述されています。良い薬が開発され、完治には至りませんが寿命が平均寿命になってきたことを考えますと、介護者の立場として関わってきた私にとっては、患者・介護者ともに療養生活を豊かにすることが大切で、そのことが懇切丁寧に語られています。
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《ビジネス》
組織のうつ症状

会社を元気にする処方箋


杉本 眞一
2015.10.01
ISBN:978-4-7733-7982-2
定価 1080円
2015年12月14日 労働新聞社

新しい価値基準を示す

 組織に元気がない企業の経営者に対し、組織活性化の方策を解説したのが本書。トップの示す姿勢が重要とした。
 著者は組織が活性化した様子を、組織の目的に向かってコミュニケーションが活発に行われ、そこで出てきた案が実行に移されイノベーションにつながっている状態とする。阻害要因として、失敗に対する悲観的な思考が形成され、暗黙のうちに新しいことを行わない、さらには案を出しても仕方がないという価値基準が形成されていることと指摘した。
 打開に向け、客観的にものをみるために、現象を整理し分析する論理的思考能力を習得したり、組織のトップが価値基準を変更し、積極的に新しい案を採用し実行していく姿勢を示すことが有効とする。

2015年12月20日 東商新聞

組織の活性度が失われ、新規アイデアがイノベーションにつながらず悪循環を起こしている状態を「組織のうつ症状」と定義。心理療法の一つである認知行動療法を組織活性化に応用し、会社を元気にする施策を紹介。高生産性や好業績に向けて組織改革を行いたい経営者向けの一冊。

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